労働人口の減少に伴い、待遇の改善や媒体頼みの採用手法は限界を迎えています。
今、若手人材が求めているのは条件だけではなく、「その会社で働く意味」や「価値観への共感」です。
本記事では、マーブルワンが提唱する「採用ステートメント」の重要性を解説します。
仕事・カルチャー・待遇の「スリーマッチ」を軸に、自社の魅力を正しく言語化することで、応募意欲の向上だけでなく、入社後のミスマッチ防止や定着率アップを実現する具体的なノウハウをお伝えします。
採用ステートメントとは?(Recruit Statement)

「採用ステートメント(recruit statement)」とは、企業が候補者を受け入れるための価値観や行動様式を、言語化しその企業で「働く意味」を明確にした主張・メッセージのことです。
Marble Oneでは、これを採用ステートメントと提唱しています。
企業が「誰に」「何を訴え」「なぜ一緒に働くべきか」を届ける

「我々はこういう会社です」「こんな会社を創っていきたい」という、企業が候補者を受け入れるための価値観やベネフィットを、言語化することが今スタンダードとなっていきます。
採用ステートメントの3つの考え方

日本企業の採用活動において、単に「仕事内容」「給与」「勤務地」を伝えるだけでは、求職者の心を掴むことは難しくなっています。
求職者は、「この会社で働く意味」、自分にとってのベネフィットを真剣に探しています。
この採用ステートメントを力強く構築するために、求職者が転職時に持つ判断軸を因数分解した「スリーマッチの法則」が非常に重要になります。
では、実際に「採用ステートメント」を自社に落とし込む際のスリーマッチ(3つの考え方)を紹介します。
- 仕事マッチ
- カルチャーマッチ(人)
- 待遇マッチ
仕事マッチ

仕事マッチとは、仕事内容が自分に合っているかという点です。これは単に「仕事ができるかどうか(こなせるか)」という能力的な適合性だけでなく、「好きや夢中になれるか」という感情的なモチベーションも意味します。
採用ステートメントでは、過去の仕事の経験や経歴が、入社後の業務にどのように活かされ、それが会社のどんなミッションや目標達成に繋がるのかを具体的に提示することが必要です。
入社後の具体的なキャリアパスでも仕事への熱量を担保するために重要です。「自分を活かし、この仕事でなら大きな成果とキャリア成長を得られる」という確信と求職者の自己実現の姿を強力にイメージさせることが、仕事マッチの成功に繋がります。
カルチャーマッチ

カルチャーマッチとは、企業のMVV(Mission, Vision, Value)やパーパスに共感できるか、そして社内の雰囲気(社風)や職場の人間関係といった、目に見えない価値観や行動様式が自分と合致しているかを判断する軸です。
給与や仕事内容が魅力的でも、企業のカルチャーや職場環境が合わなければ、求職者はすぐに離職を考えます。特に、企業がどのような価値観で意思決定を行い、社員同士がどのように関わり合っているかという行動様式は、入社後の定着率に直結します。
採用ステートメントでは、「風通しが良い」といった抽象的な表現ではなく、「役職や部署に関係なく、毎月2回のアイデアを自由に出し合います」や「うちの会社は、波平さんがカツオを叱った後、必ずサザエさんが優しくフォローするような温かさを持っています」などと、人間関係の安定感と優しさを示すこともできます。
具体的な行動や制度を通じて、カルチャーのリアリティを伝えていきましょう。「どんな価値観を共有しているか」を偽りなく、具体的に示すことが信頼に繋がります。
待遇マッチ

待遇マッチは、給与面や働く時間といった基本条件に加え、「自分が納得できる待遇か」という精神的な満足度も含みます。基本的な福利厚生だけでなく、求職者の生活スタイルや価値観に深く関わる独自のベネフィットを言語化することが、企業への意欲を高める重要な要素です。
例えば、
- 「昼休みは1人で自由に過ごせる」
- 「プライベート旅行では会社用のお土産購入不要」
- 「会社公認の休憩ゲーム制度」
- 「終業後のオフィス利用推奨」
終業後、オフィススペースや会議室を、読書会や資格の勉強のために無料で利用できたり、午後の特定の時間(例:15時〜15時30分)に、リフレッシュのための対戦型ビデオゲームやボードゲームを社員同士で行えたり、些細だが本質的な情報は、企業のスタイル(行動様式)を明確に示します。
他社にはない、面白い、かつカルチャーがわかる福利厚生は、他社との差別化を図る強力な武器となります。これらの具体的な情報を開示することで、求職者は入社後の「自分らしい働き方」を具体的にイメージし、納得感を持って入社を決断することができます。
自社で採用ステートメントを言語化するための問い

「働く意味」
- あなたが仕事に求めるものは?
- なぜ、この会社で働いてるの?
- あなたの仕事のやりがいやポリシーは?
- 仕事内容
「働く同僚や上司」
- 働くみんなの印象は?
- 同僚と協力したり助け合ったりエピソードは?
- 上司(社長など)との連携は?
- 仲の良さ、プライベートは?
「会社の社会的価値」
- 企業の存在価値や誇れるところは?
- どんなことに役立っていると感じる?
- どんな会社をつくっていきたい?
採用ステートメントの必要性

採用ステートメントの必要性は下記の通りです。
- 効率的でスムーズな採用活動ができる
- 採用人材の歩留まり向上
- どんな採用手法を選択してもブレることがない
効率的でスムーズな採用活動ができる
多くの企業が採用プロセスで感じる「時間と労力のムダ」は、実はメッセージの曖昧さに原因があります。採用ステートメントを確立することで、応募から内定までの流れが劇的にスムーズかつ効率的になります。
採用ステートメントは、応募前の段階で候補者の「自己選別」を促す、最強のフィルターです。企業文化や求める人物像の「リアル」を強く発信することで、価値観が合わない候補者は自然と応募を控えます。つまり、書類選考や一次面接での見極める手間が減り、採用決定までの労力が大幅に減ります。
また、採用ステートメントで「なぜ一緒に働くべきか」という軸が明確になると、採用チーム全員が「うちにとっての良い人材とは何か」という基準を瞬時に共有できます。面接官による評価のブレが解消され、ステートメントに沿った質問で候補者の「共感度」を深く、客観的に評価できます。結果、評価の精度が向上し、意思決定が迅速になるため、スムーズな選考が可能になります。
採用人材の歩留まり向上
採用ステートメントを、構築することで採用後の歩留まり向上につながる可能性があります。企業は、ミッションを実現するための組織帯であり、その企業が掲げている理念や価値観に共感し、ファンになれば仕事に対する向き合い方やモチベーションも変わります。
採用ステートメントを言語化できている企業は、自社を正確に表現できているため、ミスマッチが起こりにくく、同じ価値観を持った同志を持つことで採用後の定着率が安定します。
採用ステートメントがないと、入社後の定着やエンゲージメントの向上には結び付きません。条件のみで応募・入社した人材は、動機が浅く企業が大切にする価値観や文化とのギャップに直面しやすく、早期離職に繋がります。結果、ムダな採用・教育コストが発生し、残った社員のモチベーション低下や負担増(組織疲弊)を招く可能性があります。
どんな採用手法を選択してもブレることがない
採用活動は、求人広告だけでなくSNS、動画、オウンドメディアなど、手法が多様化しています。採用ステートメントという「軸」が明確であれば、どのプラットフォームで、どんな表現を用いても、一貫したメッセージをブレずに発信できます。この一貫性こそが信頼につながります。
情報過多の戦国時代となった今では、求職者は様々な情報源をリサーチして良し悪しを判断しています。「ホームページにはこう書いてたけど・・ SNSでは、反対のことを言っている」なんてことがあると、応募転換率に影響してしまいます。
必ずしもミッション・ビジョン・バリューと紐づかない

採用ステートメントは、必ずしもMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは紐づかないです。採用の基本は、企業の理念への共感ですが、理念型の採用は、
- 「何のために事業している会社なのか」
- 「何のためにある会社なのか」
- 「最終的にどんな会社を目指すのか」
ということを、社長はもちろん社員全員が共有し語れるようにしておくことが理念型採用の第一歩です。
だだ、どんな企業でも一生懸命に、採用広報や求人原稿にMVVを落とし込んでも、いざ入社して職場の周りから自社のMVVが感じられなかったり「なんか違うな・・」と感じるとギャップが生まれてしまいます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、かっこいい言葉やキレイな言葉が並ぶので、候補者によってはちょっと距離があるというか、違和感が出てくる候補者もいます。
通常、理念への共感には、候補者によっては、時間がかかることです。入社の入り口としては、パーパスタやビジョンに共感することはとても良いことです。MVVに強い共感を抱いたことがきっかけでエントリーする人もいると思いますが、MVVは「将来的に何をすべきか」という未来的なものであることで、なかなか、すぐに共感してもらうためには、時間がかかることもあります。
MVVは、一般的にスケール感が大きい話なので、ピンとこない候補者も一定数存在します。
逆に、働き方への共感は、即座にイメージと安心感を抱きやすいです。全ては、ココで働く意味を見つけられるか。ココで働く意味を見つけられそうかが1番フィットすると考えております。
まとめ|採用ステートメント
採用活動の成否は、単なる条件提示ではなく「自社で働く意味」をいかに言語化できるかにかかっています。仕事・カルチャー・待遇の「スリーマッチ」を軸にした採用ステートメントは、求職者との深い共感を生み、入社後の定着率を劇的に高めます。 一貫性のあるメッセージを旗印に、未来を共にする「同志」を惹きつけ、組織の持続的な成長を実現しましょう。
