終身雇用が当たり前だった時代は終わり、現代の採用活動は大きな転換期を迎えています。企業が一方的に応募者を選ぶ時代は過去のものとなり、今は逆に、求職者が「どの企業で働くか」を厳しく見極める時代です。企業はなぜ、応募者から選ばれる存在になる必要があるのでしょうか。その理由と、選ばれるためのヒントをお伝えします。
応募者も企業を厳しくチェックしている
採用活動は、企業が応募者を「選ぶ」ものだと考えがちです。しかし、実は応募者も企業を厳しくチェックし、「入社すべき企業かどうか」を真剣に見極めています。特に、早期退職の経験がある20代の転職希望者は、同じ失敗を繰り返したくないという強い思いから、より慎重に企業の本質を見極めようとする傾向があります。
8割以上が企業HPや採用サイトを閲覧している
2025年の株式会社マイナビの調査によると、求職者の85.9%が「企業HPや採用サイトを閲覧した」と回答しています。

引用:株式会社マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(2024年7~8月)」
Indeedやジョブズリサーチセンターの調査でも、8割以上の求職者が「必ず企業ホームページを見ている」とされています。具体的には「社風」「福利厚生」「社員の働き方」「仕事内容の詳細」などが、閲覧時に重視されるポイントです。
終身雇用の時代は終わり、多様な働き方が広がる現代において、求職者は企業を一方的に選ばれる存在ではなくなりました。インターネットで多くの企業情報にアクセスできるため、給与や待遇だけでなく、企業の文化、組織体制、働く環境まで詳細にリサーチしています。
口コミサイトも判断材料になる
求人サイトで企業の求人要項とは別に、口コミサイトで詳しくチェックしたりで社員の声を参考にしたりする応募者は少なくありません。たとえ内定が出ても、より良い企業がないかを探し続け、内定を辞退するケースも増えています。これは、求職者が企業を厳しく吟味している証拠です。企業が優秀な人材を確保するためには、求職者から「選ばれる」ための魅力づくりが不可欠です。
応募者の不信感を招く採用活動とは?
企業は利益を追求しなければ存続できませんが、同時に働く社員がいなければ成り立ちません。応募者は、自身の働きがいやキャリアを真剣に考えています。それに応えられない採用活動は、応募者の不信感を招き、入社を遠ざける原因となります。
応募者は、企業への不信感や不満がないかを厳しくチェックしています。例えば、求人票と実際の雇用条件が違ったり、面接で質問をはぐらかされたりすると、企業への不信感が生まれます。
以下は、応募者が違和感を抱きやすい採用活動の例です。
不信感を抱く行動の例 | 応募者が抱く違和感 |
残業手当の未払い | 労働環境への不信感、ブラック企業ではないかという疑念 |
募集職種と異なる業務を提示される | 企業が嘘をついているのではという不信感 |
求人票と異なる雇用形態を提示される | 誠実さに欠ける企業だと判断 |
面接で質問をはぐらかす | 企業の実情を隠しているのではという疑念 |
長期間にわたる選考、何度も繰り返される面接 | 採用担当者の意図が不明瞭で、入社意欲が低下 |
このような行動は、応募者に「この企業はいい加減だ」という印象を与え、すぐに別の企業へエントリーするきっかけになります。採用担当者は、応募者との信頼関係を築くために、誠実かつ透明性のある採用活動を心がける必要があります。
採用の妥協が企業を衰退させる
「人が人を評価する」採用活動は、決して簡単なものではありません。評価基準が曖昧なまま、安易に人数合わせの採用を行うと、企業は将来的に大きな代償を支払うことになります。
仕事へのモチベーションが低く、職務能力も低い人材が増えると、企業体質はあっという間に変わってしまいます。本来、求める人材と異なる場合は、入社後の育成計画を立てて活用できる見込みがなければ、採用すべきではありません。安易に「仕方なく採用した」という意識では、その人材が成長することは期待できません。
人数合わせの採用は、一時的に上層部の目を欺くことはできるかもしれません。しかし、配属部署から「なぜこんな人材を採用したんだ?」というクレームが上がったり、その人材が周囲のモチベーションを下げたりと、様々な問題を引き起こします。採用担当者は、自分が選んだ人材に責任を持ち、妥協することなく、企業に必要な人材を厳選する強い意志を持つべきです。
優秀な人材を確保するための採用担当者の資質
優秀な人材が採用できない理由は、企業力だけでなく、採用担当者の資質に大きく左右されます。単に人数を確保すればいいという考え方では、本当に企業を成長させてくれる人材は獲得できません。
市場は常に変化しており、求職者が求める条件や働き方も多様化しています。これまでの採用方法が通用しない時代に突入しているのです。採用担当者は、自社の企業体力や採用条件を見つめ直し、市場の動向に合わせて柔軟に対応していく必要があります。
以下は、優秀な人材を確保するために採用担当者が持つべき資質です。
採用担当者の資質 | 具体的な行動 |
誠実さ | 企業の「できていない点」も正直に伝える。入社後のギャップをなくすことで、定着率とモチベーションの高い社員を獲得できる。 |
責任感 | 妥協しない採用を貫く。万が一、配属部署からクレームがあっても、採用理由を明確に説明し、責任を持ってその人材を活かす道を考える。 |
分析力 | 就職・転職市場を常にリサーチする。自社が求める人材が、市場でどのような条件を求めているのかを把握し、採用戦略に活かす。 |
柔軟性 | 従来の採用方法に固執せず、市場の変化に合わせて、採用条件や選考方法をフレキシブルに見直す。 |
優秀な人材を確保するためには、採用担当者が「会社の顔」として、市場と求職者を理解し、責任感と柔軟性を持って採用活動に取り組むことが不可欠です。