近年、「採用難」という言葉が当たり前のように飛び交うようになりました。優秀な人材を求める企業は、あの手この手を尽くしていますが、なかなか効果を実感できないという声も少なくありません。近年、採用オウンドメディアが注目されるようになった背景には、2018年にIndeedが「オウンドメディアリクルーティング」を提唱したことが大きく影響しています。
「採用オウンドメディアを始めたけれど、なかなか効果が出ない…」
「これから採用オウンドメディアを立ち上げたいけど、何から始めればいいかわからない…」
近年注目を集める採用オウンドメディアですが、闇雲に始めただけでは期待する効果を得られないことも少なくありません。そこで今回は、採用オウンドメディアを運営する上で、採用オウンドメディアの目的や課題について深堀し、あさらに重要な3つのポイントを深掘りして解説します。これらのポイントを押さえることで、あなたの採用オウンドメディアは確実に成果へと近づくはずです。
作っただけでは意味がない!オウンドメディアの真の目的とは?
「オウンドメディアを作ったけれど、結局母集団形成には繋がらないんだよね…」そんな悩みを抱える採用担当者の方もいるかもしれません。確かに、ただ記事を量産しただけでは、露出は増えず、応募者の増加も期待できません。SEOを意識した記事作成は重要ですが、それだけがオウンドメディアの目的ではありません。
採用オウンドメディアは「企業理解」と「共感」でミスマッチをなくしつつ応募転換率を上げることが目的
私が考える採用オウンドメディアの主な目的は、「企業の深い理解」を促進することです。採用サイトだけでは伝えきれない、企業の文化、働く人々の想い、事業の魅力、そして時には課題や苦悩まで、ありのままの情報を発信することで、応募者は入社後のイメージを具体的に描けるようになります。
採用オウンドメディアとは?採用サイトとの違い
ここで、改めて採用オウンドメディアとは何か、そして一般的な採用サイトと何が違うのかについてご説明させてください。多くの企業が持っている採用サイトは、会社の設立日、従業員数、売上、事業内容といった普遍的な情報を掲載する場所です。過去のインタビュー記事などを掲載しても、担当者が異動・退職した場合に更新が難しく、サイト全体の作り直しが必要になることもあります。
一方、採用オウンドメディアは、日々の企業のリアルな姿を発信する場所です。ブログ記事形式で情報を発信するため、担当者の変更や情報の陳腐化にも柔軟に対応できます。普遍的な情報発信ではなく、更新や削除などできるメディアでありより深く企業理解を促し、共感を呼ぶことを意図したものが採用オウンドメディアなのです。
母集団形成ではなく「応募率向上」を目指す
従来の採用活動は、いかに多くの「母集団」を形成するかに焦点が当てられていました。しかし、オウンドメディアの活用においては、単に母数を増やすのではなく、「興味を持ってくれた人に深く企業について理解してもらい、応募という行動に繋げる」こと、つまり応募率の向上に重きを置くべきだと考えます。イメージしやすい導線でいうと求人媒体などで自社を知ってもらった後の応募の転換率を上げる取り組みといったところでしょうか。応募者は、約9割近くコーポレートサイトをチェックしています。
たまに「動画やインタビュー動画を作れば母集団が増えますか?」「YouTubeチャンネルを開設すれば応募者が殺到しますか?」このような相談を受けることもありますが、正直なところ、それだけで劇的な効果を生むことは難しいでしょう。むしろ、せっかく興味を持ってくれた人を逃さないために、企業のリアルな情報を届け、入社後のミスマッチを防ぐことの方が重要です。採用ホームページの情報が不足している企業こそ、オウンドメディアという形にこだわらずとも、しっかりと情報を発信することに注力すべきです。
成功事例に学ぶメルカリの「mercan」
採用オウンドメディアの成功事例として、最も有名なのがメルカリの「mercan」です。ほぼ毎日更新される豊富なコンテンツは、2200記事以上あり、メルカリという企業で働くことのリアルを詳細に伝えています。エンジニア向けのコンテンツが多い印象ですが、各部署が持ち回りで「メルカリの良さ」や「メルカリらしさ」を発信しています。
特筆すべきは、「mercan」が採用応募数の増加をKPIに置いていない点です。それにも関わらず、面接に来た内定者のの「mercan」認知率はほぼ100%という驚異的な数字を誇ります。これは、応募者が「mercan」を通じてメルカリという企業を深く理解し、共感した上で応募している証拠と言えるでしょう。PV数などの数字ではなく、「自社のことを理解した上で応募してくれているか」を重視している点が素晴らしいですね。
採用オウンドメディアのメリット
「mercan」の事例からもわかるように、採用オウンドメディアには以下のようなメリットがあります。
定着率の向上
応募者が事前に企業文化や働き方を理解しているため、入社意欲の高い人材の獲得ができて入社後のギャップが少なく、早期離職を防ぐことができます。企業の理念や価値観に共感した上で応募してくるため、エンゲージメントの高い人材を採用できます。実際、面接前に企業のコーポレートサイトを閲覧する人は約9割というデータがあります。求職者の9割近くが、応募前にその会社のホームページや採用サイトをみて一つの応募するかしないかの判断材料にしているということ。ネットの情報が応募判断に大きく影響していることがわかります。
ミスマッチによる採用コストの削減
長期的に見れば、ミスマッチによる再採用のコストや、求人広告への依存度を下げることができます。採用オウンドメディアによって面接前に応募者が企業情報を十分に収集するため、企業理解が向上し効率的な面接が可能になります。内定辞退率が下がるという結果もでてきます。これは、決してネガティブな結果ではありません。企業のリアルな姿を理解した上で、合わないと感じた方が辞退してくれた、つまりミスマッチ防止に繋がることを意味しています。面接対策として情報を集めるだけでなく、「自分には合わないかも」という判断材料を提供できたことは、オウンドメディアの大きな成果と言えるでしょう。
採用オウンドメディア運営で気をつけるべき3つのポイント
採用オウンドメディアを運営する上で特に重要な3つのポイントをお伝えします。
リソースの確保と明確な役割分担
採用オウンドメディア運営において、最も重要と言っても過言ではないのが「リソースの確保」です。魅力的なコンテンツを継続的に発信するためには、時間、人員、予算といったリソースが不可欠。立ち上げ前に、誰が、どのようにコンテンツを作成・更新していくのかを明確にすることが、成功への第一歩となります。
誰がコンテンツを作るのか?
コンテンツ作成の担当者を決める際には、以下の選択肢が考えられます。
人事担当者が兼任する
採用業務と並行してコンテンツを作成するため、担当者の負担が大きくなる可能性があります。未経験の場合、記事作成に時間がかかり、更新頻度が低下するリスクも考慮が必要です。
外部ライターに委託する
プロのライターに依頼することで、一定の品質を担保できます。ただし、費用が発生するため、予算との兼ね合いが重要です。また、企業の魅力を正確に伝えるためには、密なコミュニケーションが不可欠です。
現場社員を巻き込む
多様な視点からの情報発信が可能になり、コンテンツの幅が広がります。しかし、社員の通常業務に加えての作業となるため、事前の協力体制の構築やインセンティブ設計が重要になります。
継続的な更新体制を構築する
単発の記事作成で終わらせず、継続的に情報を発信するためには、しっかりとした更新体制を構築する必要があります。更新頻度は、週に1回、月に数回など、無理のない範囲で定期的な更新頻度を設定しましょう。また、スケジュール管理も重要でコンテンツの企画、作成、公開までのスケジュールを明確にし、計画的に進めることが重要です。役割分担でも企画、執筆、編集、校正、公開といった各プロセスにおける担当者を明確にしましょう。
コンテンツの質を担保する
せっかく時間をかけて作成したコンテンツも、質が低ければ読者の心に響かず、期待する効果は得られません。「コンテンツの質の担保」は、採用オウンドメディアの信頼性を高め、応募意欲を高めるために非常に重要です。編集体制の構築では、特に現場社員がコンテンツ作成に関わる場合、記事の品質にばらつきが出やすい傾向があります。そのため、編集体制を整え、公開前に内容をチェックするプロセスを設けることが不可欠です。必要に応じて、ライターやカメラマン、SEOに詳しい外部の専門家の力を借りることも有効です。
- 編集長の設置 記事の構成、表現、情報の正確性などをチェックする編集長の役割を明確にしましょう。
- フィードバック体制 作成者に対して、建設的なフィードバックを行うことで、記事の質向上を図りましょう。
- ガイドラインの策定 トーン&マナー、文章の書き方、画像の使用ルールなど、コンテンツ作成に関するガイドラインを設けることで、品質の均一化を図ることができます。
最後に
もし、採用活動において情報発信の重要性を感じているのであれば、ぜひ一度、オウンドメディアの活用を検討してみてください。もちろん、最初から完璧なオウンドメディアを作る必要はありません。まずは、採用ホームページの情報量を増やしたり、ブログ記事を試験的に公開したりするなど、できることから始めてみるのが良いでしょう。
弊社では、採用オウンドメディアの記事制作、動画制作、写真撮影など、情報発信に関する様々なサポートを提供しています。もしご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
あなたの企業の魅力や情報をしっかりと届け、共感してくれる仲間を見つけるお手伝いができれば幸いです。