近年、人材採用市場はかつてないほどの売り手市場となり、企業は優秀な人材の獲得に苦戦しています。従来のような会社の軸となる優秀な人材を求める採用戦略は、もはや通用しなくなってきているのではないでしょうか。
そこで、現代に提唱したい新たな視点が「お金持ちより時間持ちを望む」人材を採用するという戦略です。お金よりも自分の時間を重視する人たちです。
上昇志向のない人をターゲットに採用する
私たちが提唱しているのは、上昇志向のない社員の採用です。近年出世や昇給など上昇志向を持たない社員が増えているといいます。バリバリ働きたい層もいる中で、指示待ちだけどコツコツ真面目に働いてくれる人を採用ターゲットにします。将来、幹部候補は目指してないけど、会社の下支えとなる人です。この上昇志向のない層を取り囲む。いわゆるモブ人材です。
モブとは・・・「モブキャラクター」の略で、アニメや漫画に出てくる「名無しの群衆」のことを指しています。具体的な役割としては、重要な発言がなく目立たない登場人物ですが、なくてはならない存在です。
「モブ」と「人材」を掛け合わせて「モブ人材(社員)」と呼んでいます。
- 将来キャリアアップしたい
- スキルアップしたい
- 会社で成長していきたい
上記のような思考の人材とは逆の思考の層をターゲットにするのです。
モブ人材の必要性
従来の採用戦略では、将来の幹部候補となるような、リーダーシップや野心を持つ人材を重視する傾向がありました。しかし、すべての人がリーダーになりたいわけではありません。組織には、リーダーを支え、現場で黙々と業務をこなす「モブ人材」も必要です。「モブ人材」とは、目立たない存在ではあるものの、組織にとって欠かせない存在です。彼らは、与えられた業務を確実にこなし、組織の安定稼働に貢献します。
このような人材は、必ずしも高い評価や報酬を求めているわけではありません。中には、自分の役割を理解し、組織に貢献することに喜びを感じます。企業は、このような人材の貢献を正当に評価し、彼らが働きがいを感じられる環境を提供することが重要です。
出世したくない20代が8割
実際に、20代の社会人を対象にした仕事に関する調査では、8割の人が「責任ある仕事をしたくない」などの理由で出世も昇給を望まないという調査結果があります。

「今後出世したい」と答えた人はおよそ2割でした。会社に何も望まない人もいれば出世や昇給など全てを捨てて地方移住という道を選んだ人も世の中にはいます。
現代では、俺は自分のペースで生きる人が増えており、多種多様な生き方できるがゆえに、出世欲のないサラリーマンが多いのが事実です。会社への帰属意識は最低限に、お金よりも自由で安定した環境を求める傾向があります。
現代の若手は「お金持ち」より「時間持ち」思考の人が増加
現代の若い世代は「お金持ち」より「時間持ち」思考の人が増えています。このような人材は、必ずしも高い年収や役職を求めているわけではありません。彼らは、充実したプライベートな時間や、安定した雇用環境を求めています。企業は、このような人材のニーズを理解し、彼らが働きやすい環境を提供することが重要です。
「時間持ち思考」とは、お金や名声よりも、自分の時間を大切にする価値観のこと。
ワークライフバランスを重視し、自由な時間を増やして自分のやりたいことする考え方です。
このような人材は、仕事に追われるのではなく、効率的に業務をこなし、プライベートな時間も充実させることを重視します。結果として、仕事への満足度が高く、持続的なパフォーマンスを発揮することが期待できます。
若者のキャリア観の変化は、社会全体の変化を反映していると感じます。終身雇用制度の崩壊やグローバル化の進展など、社会が大きく変化する中で、若者は自らの力で未来を切り拓いていく必要性を感じているのかもしれません。
激変する若者のキャリア観
今就活生の意識は一昔前の僕らの時代とは違って、大きく異なっているように感じます。
転職が当たり前の時代に「終身雇用」という言葉は、もはや今の20代の辞書にはないのかもしれません。 多くの若者が口にするのは、「転職」や「副業」といったキーワード。一つの会社に縛られることなく、多様な経験を積むことでキャリアアップを目指す。そんな意欲がひしひしと伝わります。
とある新卒1年目の社会人は「キャリアプランとして転職を考えています。今の時代、一つの会社にずっといるよりも、様々な経験を積んだ方が成長できると思うんです」と語っていました。また、別の社会人も「副業にも興味があります。自分のスキルを活かして、色々なことに挑戦したい」と目を輝かせていました。
これらの声から、現代の若者は安定よりも趣味ややりたいことなど自己実現を重視する傾向にあることがわかります。企業は、このような若者の意識の変化を理解し、彼らが活躍できる環境を提供する必要があるでしょう。
「定年まで」は古い?
東京商工会議所が実施した2024年に入社したの新入社員を対象にした意識調査によると、「今の会社で定年まで働きたい」と答えた人はわずか21.1%。一方で、「チャンスがあれば転職したい」と答えた人は26.4%に上り、転職希望者が定年までを上回るのは18年ぶりのことです。

この結果は、若者のキャリア観が大きく変化していることを示しています。もはや、「定年まで一つの会社で働く」という従来のキャリアプランは、彼らにとって現実的な選択肢ではなくなりつつあるのかもしれません。
現に近年では、終身雇用制度が崩壊しつつあります。大企業のトヨタ自動車の豊田社長は、「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べています。
SNSやYouTubeなどコンテンツ発信をする若い人が急増
SNSやYouTubeの発信によって生計を立てる人が増えており、時間に縛られない生き方に憧れる若者が急増しています。インターネット環境の整備やクラウドソーシングサービスの普及により、フリーランスとして働くハードルは大きく下がりました。自分のスキルや経験を活かして、時間や場所に縛られない働き方を求める若者が増えています。
アメリカでは働く人の3分の1がフリーランスと言われています。日本でもコロナをきっかけにフリーランスという働き方もだいぶ認知されるようになりその人口も徐々に増えています。
テクノロジーの進化によって、サラリーマン以外の選択肢が増えて、どちらかという型にハマった働き方というよりは、自分でやりたいことをやりながら自由に働くという思想が多くなっているのが事実です。
今の日本の中間管理職が疲弊している姿を見て目指したくない
今の日本の中間管理職が疲弊しています。特に、中間管理職は、上司と部下の板挟みになり、長時間労働やストレスに悩まされるケースが増えています。そのような中間管理職の姿を見て、出世を目指すことに魅力を感じなくなった若者が増えています。その結果、多くの社員が将来への不安を抱え、ワークライフバランスを重視するようになりました。彼らは、出世よりも、自分の時間やプライベートを大切にしたいと考えるようになっているのです。
お金よりも自分の時間を大切にする人が増えてる
インターネットやSNSの普及により、多様な価値観に触れる機会が増えたことも、若者の意識変化に影響を与えています。かつては、高収入や社会的地位を得ることが成功の象徴とされていましたが、現代では、必ずしもそうではありません。若者は、お金よりも、自分の時間や経験を大切にする傾向があります。彼らは、旅行や趣味、家族との時間など、自分にとって価値のあることに時間とお金を使いたいと考えているのです。
副業など本業以外の稼ぎ方、生き方が多様化
テクノロジーの進化により、副業やフリーランスなど、本業以外の稼ぎ方や生き方が多様化しました。インターネットを通じて、自分のスキルや知識を活かして、場所や時間にとらわれずに働くことができるようになりました。また、シェアリングエコノミーの普及により、自分の所有物を貸し出すなど、新たな収入源も生まれています。このような多様な働き方や生き方が可能になったことで、若者は、必ずしも一つの企業に縛られる必要性を感じなくなりました。彼らは、自分のライフスタイルに合わせて、柔軟に働き方を選ぶことができるようになったのです。
これらの背景から、中小企業が「モブ社員」を求めることは、現代の若者のニーズと合致しており、合理的な選択と言えるでしょう。
中小企業が「モブ社員」を採用する方法
中小企業が「モブ社員」を採用するためには、様々な工夫が必要です。
以下に、具体的な方法をいくつか紹介します。
- コンセプトや切り口を変える
- 採用チャネルを工夫する
- 採用後のフォローアップを重視する
コンセプトや切り口を変える
求人広告や採用サイトのコンセプトや切り口を変えることで、「モブ社員」に響くメッセージを発信することができます。例えば、「安定した環境で長く働きたい」「チームワークを大切にしたい」「裏方として組織を支えたい」といったキーワードを盛り込むことで、共感を呼びやすくなります。また、企業の規模や知名度をアピールするのではなく、仕事内容や働きやすさをアピールすることも有効です。
採用チャネルを工夫する
従来の求人サイトだけでなく、ハローワークや地域の求人情報誌など、幅広い採用チャネルを活用することで、より多くの候補者にアプローチすることができます。また、社員紹介やリファラル採用を積極的に活用することで、信頼性の高い候補者を見つけやすくなります。
採用後のフォローアップを重視する
採用後も、定期的な面談や研修などを通じて、社員の定着と育成に力を入れることが重要です。「モブ社員」は、安定した環境で長く働くことを望んでいるため、安心して働ける環境を提供することが大切です。
「モブ社員」は、中小企業にとって貴重な戦力となります。彼らの能力を最大限に引き出し、組織の成長につなげましょう。